黒澤明監督の「生きるとは何か」を問いかける作品です。
哲学的な話が好きな人におすすめの作品です。見終わった後に生きる勇気をくれるような後味のいい映画ではなく、「生きることについて考える宿題」を渡されてモヤモヤした感覚になります(笑)シロクマは3回くらい見直すほど好きな作品です。
作品情報
制作年 | 上映時間 | 製作国 |
1952年 | 143分 | 日本 |
主人公の渡辺勘治は『 休まず・遅れず・働かず 』を絵に描いた様な人物で、30年間ただ時間をつぶし、生きたとは言えない役人人生を歩んできた凡俗な市民課長。
そんな男が胃癌になり、余命わずかと知ることで死の恐怖に囚われ、一旦は絶望の淵に沈みます。しかし間も無くこのままでは死んでも死に切れないと思い至り、自らが棚上げにした公園建設を、半年間の英雄的奮闘の末に作り上げるのです。
そして、回心して人生に目覚めた渡辺勘治は、自らが完成させた公園で、満足して死んでゆきます。
作品の裏側
元になった作品
文豪トルストイの短編の最高傑作と言わている「イワン・イリッチの死」を参考にしています。
ひとりの中年の男が不治の病に罹り、死を目の前にして「生きるとは何か」を考える……
そんな人間の死の瞬間を描いた短編小説です。
原作も気になるのでそのうち読んでみたいです。
制作の小話
胃癌で余命半年の役を演じた志村喬さんは、映画完成まで役作りのために私生活でも自分は胃癌なんだと、ずっと自身に言い聞かせていました。撮影終了後に、本当に胃癌かも知れないと心配になり、病院へ検査をしに行ったほど役作りに没頭していたそうです。
無気力な市職員を演じた田中春男さんは、黒澤監督に「そこまでしなくてもいいよ」と言われたのに、如何に下卑た人物に見せるかに拘わり歯を抜いてしまったそうなんです!!役作りへの熱量が半端じゃないですよね。
また胃癌の主人公が最後に亡くなってしまうシーンでは、公園はスタジオ内のセットで、雪も手作りの人工雪。そんな中、公園で雪を降らせた小道具係さんも、「 雪の身になり雪の気持ちになって降らせた 」と語っているそうです。
監督や役者さんだけでなく小道具の方まで全員が一眼となって熱量がこもっているので、1つ1つのシーンの細部まで迫力があります。
映画を見られる媒体
「生きる」は多数ネット配信で見ることができます。